相続財産に負債の方が多い可能性があります。どうすればいいのでしょうか?

 相続財産のうち、負債の方が多い可能性がある場合は、限定承認を行ってはどうでしょうか。
限定承認とは相続人全員の意志で、相続を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てをすると、遺産総額を超えた債務については責任を負う必 要がなくなります。

先日主人が亡くなりました。そこで一つ気になることがあります。それは、主人がなくなった今現在でも借家に住むことができるのでしょ

 大丈夫です。家を借りその家を利用する権利を賃借権といいますが、この権利は相続財産ですので、あなたが相続放棄等をせずに相続されているのでしたら、たとえ家主から出て行くよう申し出があったとしても相続した賃借権を持って対抗できます。しかし内縁の妻(夫)など、法律上、夫婦関係にない場面は一概にいえません。

内縁の夫が死亡して借家の大家さんから「契約者がお亡くなったので出て行ってほしい」という通知を受けました。

 あなたが家主の言い分をはねのけるためには、あなたがその家に居住する権原(権利を主張するための法律上の原因)が必要です。

ご相談内容では、亡くなられた内縁のご主人(「以下ご主人といいます。」)に相続人がいるかどうか不明ですが、相続人がいる場合とそうでない場合では 大家さんに対して主張する権原が異なります。  

◇相続人がいる場合
法律上、内縁者であるあなたには相続権がないため、相続財産である賃借権は相続人に相続され、あなたには帰属しないので家主に対して賃借権を 主張することはできません。しかし、いくらあなたが戸籍上の妻ではないとしてもご主人が亡くなられるまでの間、事実上夫婦関係を築かれてきたのですからそれをご主人が亡くなられたという偶然の事情だけで生活基盤を失われるのは妥当ではありません。

やはりあなたの“事実上夫婦として生活してきた基盤”は保護されるべきです。
どのように保護されるのかは争いのあるところなのですが、判例は「賃借権自体は相続財産であるので内縁の妻には承継されないが、内縁の妻等は相続 人の承継した賃借権を援用する形で居住権を主張できる」としています。

つまり、あなたは内縁の夫の相続人が持つ賃借権を利用して、住む権利を主張し、家主の言い分をはねのけることができるのです。
もう一歩踏み込んだ問題について考えてみましょう。

賃借権が相続人にあり、内縁者は相続人の持つ賃借権を利用して居住権を主張する、ということは賃借権を持つ相続人の意思次第で、内縁者は居住権を奪われるのではないかと危惧されます。

つまり相続人が内縁者に対して「賃借権を持っているのは相続人である私であり、内縁者であるあなたに賃借権はないのだから家を明け渡してくれない?」ということを言ってくることも十分に考えられます。

そういう場合、賃借権を持っていないあなたは出て行かなくてはならないのでしょうか?この点、判例は賃借権を持つ相続人が家を利用するにつき特別な事由があることを要求しています。

つまり特別な事由がないのに明け渡し請求をすることは権利濫用に当たるとし、認められないということです。

以上のことから、あなたは、相続による賃借権を持って大家さんの言い分をはねのけることはできませんが、相続人の有する賃借権を援用して大家さんの言い分をはねのけることができます。
◇相続人がいない場合
借地借家法第36条において賃借人に相続人がいない場合には、内縁者に賃借権を承継させると規定しています。

内縁者には相続権がありませんので、被相続人の財産は相続人にすべて帰属することになるのですが、この条文の趣旨は、もし被相続人に相続人がいない場合にはそれまで生活を共にしてきた内縁者に特別に承継させようというものです。

以上のことから相続人がいない場合、あなたは借地借家法36条に基づいて賃借権を承継したことを持って家主の言い分をはねのけることができるのです。

法定相続人や法定相続分は、被相続人の死亡の時点によって異なりますか?

 法定相続人や法定相続分は、被相続人の死亡の時点によって異なります。

例 明治31年7月16日から昭和22年5月2日までの期間

家督相続と遺産相続の2本だてでした。

最初に家督相続とは、

 家 督 相 続

 家督相続の開始時期

家督相続の開始時期は家督相続開始原因である事実が発生した時であるが、戸主権の喪失事実(家督相続開始原因)のうち戸主の死亡以外は、その発生時期は手続上確定し、明確となるので、問題となるのは戸主の死亡による場合である。

※ 旧民法においては、同時死亡の推定の規定がないので、故人が同一の事変で死亡し、各人の死亡の先後が確知できないときは、証明と裁判所の認定によるほかはないとされた。

※ 死体が発見されなくても、死亡したことが確実に認められる者については、失踪宣告の手続によるまでもなく、取調官公署が死亡を認定して報告することができる。これを「認定死亡」という。

※ 戸籍事務において、戸籍を整序するため高齢者(一般に百才以上の者)の戸籍に「年月日場所不詳死亡」と記載して、除籍簿に綴り替える手続が認められているが、この記載は何ら死亡を証明するものではないので、相続登記は死亡の日または失踪宣告により死亡したとみなされる日が戸籍に記載された後でなければ、登記申請はできないものとされる。

 家督相続の開始場所

 家督相続の開始場所は、被相続人の住所地とされる。死亡地や本籍地ではなく、生活の本拠である住所による住所地主義がとられた。この点は現行法と同様である。

 旧民法施行中に戸主の変更があったにもかかわらず、戸籍上その記載がない場合には、現在でも旧民法上の家督相続の届出ができるが、これは、戸主の変更により事実上の家督相続が開始し、家督相続人も確定していた場合に限られる。

従って、現行法の施行後に旧民法の家督相続人の選定が必要な場合には、現行法によるものとされ、現在において家督相続人の選定及び家督相続の届出はできない。現行法の相続に関する規定が適用されることになる。

旧民法の家督相続回復請求権

 「家督相続回復請求権は、家督相続人またはその法定代理人が相続権侵害の事実を知りたる時より5年間これを行使しないときは時効により消滅する。相続開始の時より30年を経過したときまた同じ。」と規定されていた。この規定は遺産相続においても準用されている。

この規定は、相続回復請求権の時効について規定するとともに、相続回復請求権という訴権及びその訴の提起権者としては家督相続人またはその法定代理人に限ると規定したものである。また、家督相続回復請求権は、その性質上、放棄はできないものとされている。

家督相続が開始すると、相続人は当然に相続権を取得するので意思表示を要しない。相続人でない者が、相続人であると思い違いをしたり、または、相続人であると偽って相続人として家督相続届をし、戸籍に戸主として登録され、相続人としての外観を作りだしても、正当な相続人は相続権を失うものではない。

このような場合に、正当な相続人が相続権の内容を回復するためには、本来は幾つもの訴を提起し勝訴判決を得なければならないものを、一つの訴でこれを実現するために規定されたのが家督相続回復請求権である。

 家督相続人の種類と順位

 家督相続人には、法定家督相続人、指定家督相続人及び選定家督相続人とがある。家督相続における法定家督相続人は相続放棄は許されない。

法定家督相続人には、第一種法定家督相続人と第二種法定家督相続人とがあり、第一種は被相続人の家族である直系卑属であり、第二種は被相続人の家族である直系尊属である。

また、入夫が戸主となる場合の入夫も法定家督相続人とされるが、入夫婚姻による家督相続においては入夫が家督相続人となるので順位に問題は生じない。

また、入夫の離婚による家督相続の場合の家督相続人は法定の順位により定まるものであり、戸主の地位が前戸主に復帰するわけではないので、必ずしも前戸主の女戸主が家督相続人となるものではない。新たな家督相続が開始するものである。

この場合は、あくまでも入夫である戸主についての家督相続人が相続することになる。従って、場合によってはその家とつながりのない者が家督相続人となることもあり得る。

 指定家督相続人とは、第1順位の法定家督相続人がいない場合で、戸主の死亡または隠居による家督相続に限って、被相続人が生前の届出または遺言によって指定した者である。血縁のない者でも指定できる。家の継続を第一義としている。

 選定家督相続人とは、法定家督相続人も指定家督相続人もいない場合に、被相続人の父または母もしくは親族会が選定した相続人であり、家族の中から選定した場合を第一種選定家督相続人といい、家族以外の者から選定した場合を第二種選定家督相続人という。

選定家督相続人は、家督相続開始後(家督相続原因の発生後)において選定されるもので、家督相続原因のいかんを問わず行われる。選定者は第一に父、第二に母、第三に親族会とされ、父母は家督相続開始のときに家族であることを要する。

父母には養父母、継父母、嫡母も含まれる。養家に養母と実母がある場合は養母に選定権があり、家に実母と養父がある場合は実母に選定権があるものとされ、その家に縁故関係の深い者が先順位の選定者とされる。

 第1順位の家督相続人

 第1順位は第一種法定推定家督相続人である。
1.前戸主の家族たる嫡出男子中の年長者
2.前戸主の家族たる庶男子中の年長者
3.前戸主の家族たる嫡出女子中の年長者
4.前戸主の家族たる庶女子中の年長者
5.前戸主(女)の家族たる私生男子中の年長者
6.前戸主(女)の家族たる私生女子中の年長者

第一種法定推定家督相続人とは、相続開始当時、被相続人の戸籍に同籍している直系卑属で、複数いるときはそのうちの法定された順序によって一人が相続する。

 第2順位の家督相続人 

第2順位は前戸主が生前または遺言によって指定した指定家督相続人である。なお、生前指定の場合、その旨を戸籍法の定めに従って届け出ると、被相続人(戸主)の身分事項欄に指定家督相続人が記載され、相続開始前でも指定家督相続人が明らかになるが、指定家督相続人の記載は応急措置法施行までの間に家督相続が開始されない場合は、その効力を失った。

すなわち、応急措置法施行後に開始した相続においては指定家督相続人は認められないということである。もっとも応急措置法施行後は家督相続は存在しないので、家督相続の届出はできない。

 第3順位の家督相続人

 第3順位は第一種選定家督相続人である。第一種であるので、同籍の家族の中から選定された者である。被選定者は、相続開始の時及び選定の時に同籍の家族であることを要する。

 第4順位の家督相続人

 第4順位は第二種法定推定家督相続人である。第二種であるので、前戸主の家族たる直系尊属である。直系尊属が数人いる場合は次の順序による。
1.前戸主の家族たる父
2.前戸主の家族たる母
3.前戸主の家族たる祖父
4.前戸主の家族たる祖母(曾祖父母等これに準ずる。)

第3順位までの家督相続人がいない場合、同籍の直系尊属が法律上当然に家督相続人となる。法定の家督相続人は相続放棄はできない。

 第5順位の家督相続人

 第5順位は第二種選定家督相続人である。これは第4順位までの家督相続人がいない場合に、親族会は、被相続人の親族、分家の戸主または本家、分家の家族もしくは他人の中から家督相続人を選定しなければならないと規定されているものである。

先ず同籍でない親族から選定し、それでもいない場合は他人の中から選定する。

○ 直系卑属には自然血族である実子(嫡出子、非嫡出子)と法定血族(養子、継子、嫡母庶子)が含まれるが、姻族は含まれない。すなわち、戸主が死亡し、その嫁が家族として残っている場合に嫁は舅の法定家督相続人となれない

。一方、継子と継父母及び庶子と嫡母は実質的には姻族関係に過ぎないが、家族であれば法定血族関係が認められているので、お互いに法定家督相続人となる。

法定家督相続で注意しなければならないのは、その家の血統を問題とせず、もっぱら前戸主その人についてのみ着眼して家督相続人を定めることである。従って、入夫として戸主となった者が死亡し、家女である妻との間に嫡出子がないときは、夫の庶子または引取入籍によって入家した夫の直系卑属(その家とは血族関係にない者)があれば、その者が家督相続人となることになる。

 男子優先の例外
 被相続人たる女戸主に男子と女子がいて、男子が父に認知されていない女戸主の婚姻前の非嫡出子(私生子)であり、女子が嫡出子または庶子(この場合は、父に認知された私生子が父の家の戸主の同意がないため父の戸籍に入れず、母の家族となっている者)であるときは、その女子が優先する。

 準正または養子縁組により嫡出子たる身分を取得したときは、その身分を取得したときに生まれたものとされる。従って、弟が生来の嫡出子で、弟の出生後に兄が認知され準正が生じた場合、兄の方が後に生まれたものとされ弟が優先することになる。

生来の嫡出子があるのに養子縁組により養子となった者は、生来の嫡出子より年長でも生来の嫡出子に優先することはない。また、法定推定家督相続人のある戸主は婿養子を除き男子を養子にすることはできないものとされていた。

例外的に、旧民法においては、自分の嫡出子でも他家にある者は養子にできるものとされていたので、他家にある戸主の嫡出子を養子として縁組をした場合には、縁組の時期に関係なく、嫡出子となった時期によるものとされた。

 法定家督相続人には家督相続の放棄は認められないが、限定承認は認められた。

入夫婚姻による家督相続において、入夫婚姻で入夫が戸主となる場合は、女戸主に法定推定家督相続人でる直系卑属がいても、他家から入ってきた入夫が戸主となり順位の問題は生じない。法定家督相続人の順位に対する特例をなすものである。この場合、その女戸主であった者の子は、父に認知されていない非嫡出子を除き、入夫戸主の継子として入夫戸主の法定推定家督相続人となる。

 被相続人の直系卑属が親族入籍または引取入籍によって他家からその家に入ってきた場合には、家督相続の際に、嫡出子または庶子たる他の直系卑属がいない場合に限って家督相続人となる。この場合、入籍者である嫡出子は年少庶子女にも劣ることになる。これは、同意による入籍者がもともと家にいる嫡出子や庶子に先立って家督相続することは、人為的に法定の相続順位を変更することになり好ましくないからである。このことは、入籍後にその家で嫡出子、庶子が生まれた場合も同様である。

親族入籍、引取入籍は新たな入籍であり、復籍ではない。一方、離婚、離縁による場合は、その実家における身分が回復するので復籍である。復籍の場合は、最初から家族であったものとされるので、復籍の時期に関係なく年長者が優先する。

 婿養子の相続順位

 婿養子縁組とは、養親との縁組届と養親の女子との婚姻届を同時に届出することにより成立する。
通常の男子の養子は、縁組の日に出生した嫡出男子と同視され、縁組前に出生した嫡出女子よりも、また、縁組後に出生した嫡出男子よりも優先して家督相続人となるが、婿養子の場合は特則により、相続開始のときに婿養子がいなかったならば家督相続人となるべき者(婿養子の配偶者を含む。)の有する相続権を侵害することはできないものとされた。

従って、非嫡出子たる男子(庶子または私生子)がいるところへ姉妹のために婿養子を迎えた場合、婿養子は嫡出子となるが、その非嫡出子たる男子に優先しないものとされる。また、姉が法定推定家督相続人であるときに、妹に婿養子を迎えた場合も、婿養子は男子であるが、姉妹に優先することはできない。

一方、女子のみを有する戸主が長女のために婿養子を迎えた場合は、婿養子が法定推定家督相続人となる。しかし、その後に、嫡出子たる男子が生まれると婿養子は実子のために法定推定家督相続人たる地位を失うことになる。単純な養男子であれば、その後の嫡出男子の出現により法定推定家督相続人たる地位をおわれることはない。

また、単純養子の後に、その家の女子と婚姻した場合は、婿養子とはされないので、婿養子のように相続権を失うことはないものとされる。養子縁組と婚姻を同時にした場合に限り、婿養子とされる。

 継子の相続

 継子の相続権については、家付か他家から入った者か等、被相続人の家における関係その他の事情を考慮して個々の事案について決すべきものとされる。
1.妻の連子たる継子と親族入籍の二男の場合は、二男を相続人とする。(戸主の血  統優先)
2.女戸主の先夫の子と入夫婚姻によって生じた二男の間では、継子(先夫の子)が相続人となる。(家の血統優先)

 家督相続における代襲相続

 家督相続においても法定推定家督相続人が家督相続開始前に死亡したり、廃除されたときは、その法定推定家督相続人の家族たる直系卑属が被代襲者と同一順位で家督相続人となるものとされる。

従って、戸主に二人の男子があり長男が死亡した場合、長男に子があれば、その子が男でも女でも二男である叔父に優先して家督相続人となる。すなわち被相続人の孫が子よりも優先して家督相続人となる。法定相続順位(親等の近い者が優先する。)の特例とされる。

 代襲原因
 家督相続における代襲原因は、相続開始前の死亡、相続権の喪失であるが、欠格、廃除等現行法における原因のほかに、法定推定家督相続人の離籍、婚姻、縁組、本家相続、離縁、国籍喪失等その家の構成員でなくなった場合でも家督相続の代襲原因となる。従って、除籍されれば代襲原因となる。

 代襲者の要件
 代襲相続人は、被代襲者の直系卑属であり、かつ、相続開始のときに被相続人の家族たる直系卑属でなければならない。従って、養子縁組前に出生した養子の子は被相続人である養親の直系卑属ではないので代襲相続権を有しない。

また、被代襲者の子が継子である場合も、その者は被相続人の親族ではないので代襲相続権を有しない。また、昭和17年3月1日の前は、代襲原因が発生した時に生まれていなければ代襲相続権はないものとされ、代襲原因発生時に胎児であった者の代襲相続権が否定されていたが、戦争により胎児を残して死亡する若い父親が増加したことにより、昭和17年3月1日施行の法改正により、代襲原因発生時に胎児であれば代襲相続権は認められるものとなった。

代襲者は胎児を除いて、代襲原因発生時に被代襲者の直系卑属として存在しなければならないものとされるので、代襲原因発生後の養子は代襲相続権を有しない。但し、代襲相続人は代襲原因発生時に被代襲者の直系卑属として存在していれば、代襲原因発生後に被相続人及び被代襲者の家に入った者でも差し支えないものとされる。

但し、相続開始の時には家族となっていることを要する。代襲原因発生当時には他家にあったが、その後相続開始までに入籍、復籍して家族となっていればよいということである。

 相続人の指定と養子縁組

 家督相続人の指定と養子縁組は、家の継続を計るという点で、その目的、作用を同じくするが、両者の間には次のような差異がある。
・ 縁組は双方行為であるが、指定は単独行為である。
・ 養子縁組は縁組によって親族関係を生ずるが、指定によって親族関係が生ずることはない。
・ 養親は成年でなければならないが、指定は未成年でも意思能力があれば単独でできる。
・ 縁組においては尊属または年長者を養子にできないが、指定は被指定者に制限はない。
・ 縁組は配偶者とともにすること、父母と戸主の同意を要するが、指定にはそのような要件はない。
・ 法定の推定家督相続人である女子がいる場合でも養子を迎えることができるが、法定の推定家督相続人がいれば指定はできない。
・ 縁組成立後、実子が生まれたり、他の養子を迎えた場合には、家督相続の順位に影響を与えることがあるが、指定の場合は法定の推定家督相続人ができると効力を失う。
・ 縁組の取消には制限があるが、指定の取消は自由である。

 選定家督相続人の被選定者

 第一種選定家督相続人の場合、相続開始の際及び選定の際に家族である者の中から選定しなければならないものとされるが、選定される者は、被相続人の配偶者、兄弟姉妹または兄弟姉妹の直系卑属とされ、さらに、次の順序に従って選定するものとされる。
1.家女である配偶者
2.兄弟
3.姉妹
4.家女でない配偶者
5.兄弟姉妹の直系卑属

 順序まで定められているので選定とはいえないのではないかと考えられるが、この定められた順位の同順位者が複数あるときは、その中で何の制限もなく自由に選定できる。また、「正当の事由」あるときは裁判所の許可を得て順序を変更して、またはその範囲から選定しないこともできるとされている。また、親族会において、被相続人が廃除した者を選定することもできるとされている。
選定の時期について法律上は何の制限もないが、相続開始後になされることを要する。

被選定者は相続開始の時に遡って家督相続人としての地位を取得するものとされる。選定は無方式の単独行為であるので、選定者が意思表示した時に効力を生じ、被選定者の知不知を問わないし、被選定者の承諾も不要である。但し、被選定者は相続の承認または放棄ができる。選定しただけでは戸籍上の届出は不要である。被選定者が承認した時に家督相続の届出をする。胎児であればその実母が届出をすることになる。

 被相続人の配偶者の相続権

 家督相続において、被相続人の配偶者は第3順位(第一種選定家督相続人)の家督相続人となる地位を持つ者とされているが、被相続人たる夫に家を同じくする直系卑属がある場合には、夫を相続できない。第1順位の法定推定家督相続人がいないときは、被相続人は家督相続人を指定できるが、夫が妻を指定するか否か、また、誰を指定するかまったく自由であるが、妻を指定することは少ない。指定が行われず、または、指定された者が家督相続を放棄したときに、はじめて妻は家督相続人となることができる。

しかし、この場合でも妻が直ちに家督相続人となれるのは、妻が「家女であるとき」、つまり家付の女に限られる。この家女には養女も含まれる。他家から入った妻の場合は、その家に夫の兄弟姉妹があれば、これらの者が先に家督相続人に選定されることになる。また先例によると、戸主が死亡し、残った家女でない妻の外に家族がいない場合でも、妻は親族会の選定によらなければ家督相続人となることができないとされている。外に誰も家族がいなくても、家女でない妻は選定の手続を経なければ家督相続人となれないとするものである。このように、妻の相続上の地位は低く、夫の財産に対する何らの権利も法律上保証されていなかった。

 選定家督相続人の場合、選定の方式、期限について何の規定もないので、選定されるべき立場の者がいても、選定されないまま、死亡等により選定されるべき者がいなくなってしまうと、家督相続権は第4順位の第二種法定家督相続人に移ってしまう。

この例は、夫たる戸主が死亡し、法定家督相続人もなく、指定もなされなかったときで、残った家族が家女でない妻と夫の両親であった場合に、夫の父は嫁を選定家督相続人に選定せずに、放置しておく、嫁がいなくなれば自分が家督相続人になれるのであえて選定せずにおくということは、しばしばあったようである。

 第5順位の第二種選定家督相続人は、家族の中にどうしても家督相続人となる者をみいだせないとき、親族、分家の家族あるいは他人の中から選定して、何とか家を継続させ、家名の維持を図るとする立法趣旨から設けられたものである。従って、第一種の選定家督相続人のように、選定しないでおくということは許されない。この第二種の選定ができないときは、家督相続人がいないものとして絶家となる。絶家の財産は最終的には国庫に帰属することになる。 

 家督相続人の資格

 家督相続人は、相続財産を承継する外、身分上の権利に属する戸主権を承継するので、法人、外国人は家督相続権を有しない。家督相続人は相続開始の時に、権利能力者であることを要する。(同時存在の原則)但し、胎児はこの時に生まれたものとみなされ家督相続能力が認められる。

旧戸籍法は、家督相続人が胎児の場合、母は相続開始のあったことを知った日から1ヶ月以内に、診断書を添付して家督相続の届出をしなければならないと規定し、胎児を名義人とする相続登記を母からなし得るものとしている。(現行法では登記に診断書は不要である。)

また、胎児の家督相続の届出後、胎児が死体で生まれたときは、母は1ヶ月以内に、医師または産婆の検案書を添付して死産の届出をすることを要し、母が届出をしないときは、家督相続人がその旨の届出をするものとされていた。

代襲相続においても、被代襲者の代襲原因発生の時に胎児であれば代襲相続権があるものと昭和17年3月1日以降は改正された。従って、それ以前は代襲原因発生の時にすでに生まれていなければ、たとえ相続開始の時に生まれていても代襲相続は認められなかった。現在は、相続開始の時に胎児であれば代襲相続権は認められる。

 戸主が養子を迎えた当時、戸主に胎児がいた場合、この胎児は出生しても養子に先んじて家督相続人となることはできない。

 家督相続の届出は1ヶ月以内にしなければならないので、死亡した戸主に女子と胎児がいた場合、死亡後1ヶ月以内に胎児が生まれない限り、男子か女子かも判明しないので、とりあえず女子を家督相続人として届出をしておき、後に男子が生まれたときは、その男子が家督相続人となるので、弟から姉を相手方として家督相続回復の訴を起こすか、戸籍訂正の手続をすることになる。

 婚姻後200日内の出生が明らかな胎児については、夫の子の推定を受けないので、胎児認知がされていない限り、家督相続の届出はできないものとされるが、この胎児も指定家督相続人とすることはできる。但し、夫の子の推定を受けない嫡出子でも出生後に家督相続の届出をすれば受理されたようである。(胎児のままでは受理されなかったということである。)

 私生子

 私生子とは、婚姻関係にない男女から生まれた出生子をいうが、父母に対する身分上の地位、帰属する家を定める上で、3種類に分けられる。

・ 父母共に知られざる子(出生の知れない子)
これは棄児のように、父母共に知れない子である。この者はいずれの家にも入れず、一家を創立するほかはない。

・ 父の認知を受けた子
父母の婚姻外に生まれた子で父の認知を受けた子、すなわち父母共に知れている子である。この父の認知を受けた子を父との関係では庶子という。従って、庶子とは父の認知を受けた私生子となる。一般には、私生子として出生届がなされている子に対し、後に父が認知の届出をすることにより、私生子の身分が庶子と改められる。庶子は嫡出子に次ぐ相続に関する地位が与えられた。

庶子は父が戸主であれば父の家に入るが、父が戸主でない家族である場合には戸主の同意がなければ父の家に入ることはできない。戸主の同意がなければ母の家に入ることになるが、母の家に入る場合も母が戸主でなければ戸主の同意が必要である。いずれの戸主の同意も得られなければ一家を創立するほかはない。

・ 父の知られざる子
母と子の関係は分娩の事実により明らかであるので、法律上、父の知られざる子ということになる。父の知られざる子すなわち父の認知を受けていない婚外子は、普通母の家に入るが、母が戸主でなければ戸主の同意が必要である。戸主の同意が得られなければ一家を創立するほかはない。

 庶子(父の認知を受けた私生子)

父の認知を受けた私生子につき、私生子の出生届が未了であるときは、直ちに父の庶子として出生届ができるものとされていた。この庶子の出生届は、出生届とともに認知の届出もあわせもつものとして庶子出生届と呼ばれた。

庶子が父の家に入ったとき、父の妻がいるか、父が妻を迎えた場合、その妻は庶子との関係において嫡母と称し、嫡母庶子関係として、その間に直系血族一親等の親子関係が擬制された。(実際には姻族関係に過ぎないが法定血族として取り扱われた。)

夫婦親子が事故で同時死亡したときはどのようになりますか?

 夫婦又は父母が(被相続人)と子(相続人)が同時に死亡したときは、夫婦間及び親子間の双方ともに、相互に相続そのものが生じません。

ただし、父母と同時死亡したこの実子(孫)がある場合には、当該実子(孫)が死亡した親(子)に代わって祖父母の財産について相続をすることになります。

他人の子が戸籍上実子になっているときはどうなりますか?

 戸籍に実子として記載されている限り、他人の子でもそれは真実なものとして法律上の親子関係があると推定されます。

したがって、戸籍上の親子関係存否確認の訴えなどにより戸籍上の親子関係について身分整序がなさられない限り、戸籍上の実子と記載されている他人の子は、一応、他の子供同様に推定相続人として取り扱われることになります。

相続人の欠格とはどのようなことですか?

 相続人の欠格とは民法891条に定める欠格事由に該当する違法行為があった人について、不正な行為があったときから当然に、被相続人との関係で相続権を失わせるという制度です。 ・被相続人や他の相続人の生命に対する侵害行為および
・被相続人の遺言に関する妨害行為の2つがあります。
詐欺又は脅迫により被相続人が相続に関する遺言をした場合や、被相続人を殺害した場合には相続欠格事由となり、相続はおろか遺贈も受けられません。
この場合は、何らの法的手続きは必要なく、当然相続欠格事由となり、相続・遺贈はできません。

推定相続人の廃除とはどういうことですか?

 推定相続人の廃除とは、遺留分を有する推定相続人に、被相続人に対する虐待など一定の自由があるため、被相続人が、その推定相続人に相続させたくないことを望む場合に、推定相続人に相続権を失わせる制度です。
推定相続人(妻や子等)が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたときは、被相続人はその推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求するか、遺言書で指定することができます。
被相続人の気が変わったときには、家庭裁判所に廃除の取り消しを求めることもできます。
相続の欠格や廃除をされた相続人は、当然のことながら相続はありませんが、その相続人に子がいるときは代襲相続されます。

推定相続人の廃除・取消の審判確定前の遺産の管理はどの様になりますか?

 遺産は、遺言執行者又は、相続人全員が管理することになりますが、被相続人の親族、利害関係人又は検察官は、家庭裁判所に遺産の処分禁止、占有移転の禁止などの必要な処分を求めることができます。

生前に被相続人から贈与を受けていた相続人の贈与分はどのようになりますか?

 被相続人が相続開始の時において有した財産の価格に、生前に贈与を受けていた財産の価格を加えたものが、その相続財産とみなされ、生前に贈与を受けていた相続人の具体的な相続分は、相続財産とみなされた財産の価格に、指定又は、法定の相続分割合をもって算出した価格から、相続人が贈与を受けた、財産の価格を控除する方法によって算出されます。

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